『人間に光あれ』を読む ③
2019年 05月 11日
「人間に光あれ」を読んで
差別される経験の過酷さが予想をはるかに越えるものであること、そしてそれがあくまでも想像の域を出ていないことをも教えられました。差別はしないつもりでいても、それはつもりに過ぎないと自分の立ち位置を問われ、背筋を伸ばして読まざるを得ない一冊です。
自伝とは言っても武勇伝じみたことは一切なく、そこにあるのは差別なき社会をひたすらに希求する真摯な姿であり、人権を守るべく立ち上がった中山先生はじめ弁護団の珠玉の言葉が散りばめられています。それらが実体験に基づいていることを疑う余地はありません。
たとえば、「連帯とはイデオロギーの一致ではない。一人一人が仲間として助け合う大切さである」また「人間の可能性と可変性、人間の優しさを信じています」「わたしの今の夢は一つ一つの命が大切にされ、一つ一つの命が光り輝く社会が実現されること」「アイヌ民族の復権とは、民族としてのあらゆる誇りを回復するのが解放の道であって、アイヌの自覚を捨て去ることではない」「狭山事件は、部落差別を利用した悪質な権力犯罪として厳しく弾劾されなければならない」「差別された体験を持たない人にとっては、その体験のないことについて根本的な自己反省をしない限り、むしろ現実には差別する側に立ってしまうことが多いのである」等、枚挙に暇がありません。
これほどの理不尽で過酷な経験の中でも激昂するのではなく研ぎ澄まされた理性と知識、温かい人間性を武器に闘っておられ、社会に対する希望を失うことがありません。それに反して警察や検察、裁判所等の組織が守ろうとしているものは何なのでしょうか。真実を覆い隠すことで権威や信頼を獲得できると考えているのでしょうか。いいえきっと、その中にも良心に突き動かされて行動する人がいるはずだと信じたいです。勇気をもって立ち上がった弁護団に呼応して、勇気を奮って正しい道を探求する人々が体制側にも出でくるはずです。
中山先生のような方々が沢山おられる事実から人間も捨てたものではないと、慰めと励みを与えられました。
(K.M)
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by hageguma
| 2019-05-11 01:16
| 事件の経過と真相