マスコミ報道の問題点を知ることから②

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【目黒虐待死事件】児童相談所はなぜ、結愛ちゃんを救えなかったのか――

ⓒ日刊サイゾー 2018.6.11 http://www.cyzo.com/2018/06/post_165407_entry.html

 東京都目黒区の船戸結愛(ゆあ)ちゃん(当時5歳)が虐待を受け死亡した事件が、注目を集めている。警察庁は今月6日、保護責任者遺棄致死容疑で父親の雄大(33)、母親の優里(25)の両容疑者を逮捕したことを発表したが、結愛ちゃんが残した「もうおねがいゆるしてゆるしてください」という”反省文”に、どうして行政や周囲の大人は彼女の命を救えなかったのか、やりきれなさを感じている人も多いだろう。

 そんな中、エッセイストで自身も1歳5カ月の娘を育てる犬山紙子氏が、Twitterで「#児童虐待問題に取り組まない議員を私は支持しません」のハッシュタグを使って呼びかけを始めた。11日13時現在までに約7万件拡散されており、犬山氏はBuzz Feedの取材に対し、「『保育園落ちた日本死ね!!!』のように、議員さんが取り上げざるをえないようなタグにしたかった」と語っている。果たして今後、行政にどこまで影響を与えられるのか注目だ。

 一方、子どもの虐待事件が起きるたびに児童相談所の対応が問題視されているが、2009年に1,101件だった相談件数は、15年には10万3,260件と、およそ100倍にまで増加。職員一人当たり100件あまりの対応を求められ、限界寸前という実態もある。そこで今回は、以前当サイトで紹介した『ルポ 児童相談所 一時保護所から考える子ども支援』(ちくま新書)、『告発 児童相談所が子供を殺す』(文藝春秋)のレビュー記事を再掲載し、児童相談所が抱える問題について考えたい。


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子どもたちを救うはずが、ますます不幸にさせる? “限界寸前”児童相談所の実情とは――

ルポ 児童相談所: 一時保護所から考える子ども支援(ちくま新書)


「児童相談所」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか?

 虐待を受けた子どもたちの相談や、養育困難な家庭への対応、そして非行や虐待によって家庭にいられなくなってしまった子どもたちを一時的に保護するといったことを行っている児童相談所の仕事は、社会からはなかなか見えにくくなっている。だが、その世界に一歩足を踏み入れると、そこには驚くべき現実が広がっていた。米・不動産ファンド「モルガン・スタンレー・キャピタル」出身で、NPO法人「Living in Peace」を設立し、子どもたちの支援を行っている慎泰俊による著書『ルポ 児童相談所 一時保護所から考える子ども支援』(ちくま新書)から、その実態を見てみよう。

 本書を一読して驚かされるのは、児童相談所における子どもたちの扱いだ。虐待、貧困、非行などによって、家庭での養育が困難となった子どもたちが一時的に預けられる「一時保護所」では、一昔前まで体罰が当たり前だった。現在では体罰こそ減ったものの、「外出禁止が徹底され、学校にも行くことができない」「脱走防止のために、窓を開くこともできない」「私物はおろか、服も持ち込めない」「男女のトラブルを避けるため、きょうだいであっても会話ができない」「連絡先交換を防ぐため、紙の使用も管理されている」など、すべてが「トラブル防止」の名のもとに、徹底的に管理されている。在所経験のある人々は、この施設について口々に「あそこは地獄だ。思い出したくもない」「刑務所のような場所」と表現。さらに、一部の保護所では、トラブルを起こした子どもに対しては「個別対応」という名目で、4畳の個室での隔離生活を強いる。まるで、独居房のようだ

 かつて、一時保護所は非行少年の入所比率が高く、暴力や規律で徹底的に抑えつける必要があった。また、近年は虐待や精神障害で入所するケースが多く、心の傷がちょっとしたことで爆発してしまうケースもある。そんな、さまざまな問題を抱えた子どもたちを1カ所で集団生活させるため、このような抑圧的な方法を用いて管理しているのだ。

 もちろん、神奈川県の中央児童相談所のように「子どもを守るための場所なのだから、子どもが逃げ出したがるような場所であるほうがおかしい」と、子どもに寄り添った一時保護所を開設している自治体もあるが、抑圧的な一時保護所は少なくない。その原因を、慎は、職員数の不足とともに、職員の子どもたちに対する想像力の欠如に見ている。慎自ら、携帯電話を切って一時保護所で2泊3日を過ごしたところ、言いようのない閉塞感を味わったという。シフト制で働き、仕事が終われば帰宅する職員たちには、その閉塞感が理解できないようだ。

 また、児童相談所そのものに目を移してみると、別の深刻さが浮かび上がってくる。

 虐待を受けた子どもの支援、養育困難な子どもやその家庭の対応にあたっている児童相談所では、常に職員一人当たり100件あまりの対応を行っている。2009年に1,101件だった相談件数は、15年には10万3,260件と、およそ100倍にまで増加。虐待数そのものが増加しているのか、通報しやすい環境が整ってきているのかは定かではないが、職員の負担は増加の一途をたどっている。この15年間で、児童福祉司の数は1,230人から2,829人に大幅増員されたが、相談件数の伸びには追いついておらず、「あと2~3倍の人員が必要」というのが現場の声。多忙のあまり、深刻な虐待を見逃し、虐待死事件に至ってしまったという、取り返しのつかないケースも報告されている

 このような状況を打破すべく、慎が提言するのは、行政による子ども向け対策の抜本的な改革とともに、3~4年のローテーションで部署を異動する、役所内の人事制度の見直しだ。また、民間でも、児童相談所に頼るばかりでなく、地域の努力によって状況を好転させることはできると説く。

 虐待を受ける子どもたちに罪はない。しかし、増え続ける虐待によって職員が忙しく目配りできない環境や、一時保護所の抑圧的な対応は、子どもたちを救うばかりか、ますます不幸にさせていく。行政と民間がこの問題に向き合って根本を改善しない限り、すべての子どもたちが安心して生きられる社会はやってこないのだ。
(文=萩原雄太[かもめマシーン])

子供を殺すのはいったい誰か? 現場からの告発『告発 児童相談所が子供を殺す』

告発 児童相談所が子供を殺す』(文藝春秋)


 最近、虐待死のニュースをよく目にするようになった。日常的に行われる虐待の末に死んでしまう子供や、親に子育ての知識がないために知らず知らずのうちに命の危機にさられている子供たち。

 そんな子供と親の救済措置として機能する“はず”なのが、「児童相談所」である。機能する“はず”というのは、「児童相談所」で働く児童福祉司の怠慢な仕事ぶりが、『告発 児童相談所が子供を殺す』(文藝春秋)で暴露されているからだ。

 本書は、かつて児童福祉司として実際に働き、現在は独立してカウンセラーとして活躍する山脇由貴子のルポだ。山脇がカウンセリングした子供は2,000人以上。その実績から児童相談所の実態を、辛辣に指摘している。

 そもそも、児童相談所に勤める「児童福祉司」とはいったいどんな職業なのだろう? 本書によれば「1、子供、保護者からの福祉に関する相談に応じる。2、必要な調査・社会診断を行なう。3、子供、保護者、関係者等に必要な支援・指導を行なう。4、子供、保護者等の関係調整を行なう」とある。要するに、家庭内で起きた案件の相談役ということで、法的な強制力は持ち合わせていない。しかも、児童福祉司は大学や専門機関で訓練を積んだ専門家ではなく、地方公務員が異動でやってくるだけだというのだ。ということであれば、一時の職場と捉える公務員も多いわけで、本書には彼ら児童福祉司が家庭からの緊急を要する相談を、ないがしろに扱う様子が記されている。

 虐待の相談があったとき、どのようにして虐待が認められるか、あるいはどのようにして虐待がなくなったとするのか? この判断についての明確な判断基準はなく、これもまた担当した児童福祉司に委ねられる。どう見ても虐待が続いているのに、虐待はなくなったというとある児童福祉司は、それを「見た感じ」と言っていたそう。
 
“子供の悲鳴よりも親のクレームの方が怖い”というのが本音のようで、親からの苦情、場合によれば逆恨みをされたり、担当者が信頼関係を築くことに失敗して、保護所から子供が逃げ出してしまうこともあるそうだ。

 児童相談所は、基本的に受け身の体制だ。虐待が発覚するのは、地域学校や病院からの連絡が圧倒的に多い。赤子を何度も揺さぶる「揺さぶられっ子症候群」の場合は、子育てをよく知らないことが原因なので、ちゃんと指導をすれば虐待はなくなる。

 虐待はなぜなくならないのか? 山脇は、本書で「親の無知」が原因だとしている。赤子の夜泣きに耐えられなくて押し入れに閉じ込めたり、口にガムテープを貼る。「犬のしつけだと思って」とは親の言葉。赤子が泣いたりするのは、意思表示だということをわかっていない

 言うことを聞かない子供を無視したり、家から追い出したりする。親としては一時的なものだとしても、子供は「ひどいことをされた」と記憶する。叱られるよりも親の無関心に耐えられない子供は、再び親を怒らせるなどして関心を向けさせる、そして親の暴力が激しくなる。全て、親の無知が招いた結果だと言えるだろう。

 虐待の相談件数は年々右肩上がり。8万件を超えるその数を見ると陰鬱な気分になる。本書の最後に、山脇は児童相談所のあるべき姿を示している。そこから感じられるのは、山脇の未来ある子供たちに対する真摯な思いだ。




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by hageguma | 2018-06-12 10:49 | 読み物 | Comments(0)

池田市民の会/池田市民共闘/池田支部


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