国際化には人権意識が基礎となる

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日本人の「外国人観光客への偏見」が酷すぎる

「お・も・て・な・し」は五輪の年だけなのか
ⓒ東洋経済 2017年08月22日 http://toyokeizai.net/articles/-/185483

人生相談室で人気のミセス・パンプキンの番外編コラムをお届けします。今回はインバウンド観光客に対する偏見をなくそう、という提案です。

まもなく秋の観光シーズンがやってきます。多くの訪日外国人(インバウンド観光客)で、観光地はどこも混雑することでしょう。ところで私の狭い生活範囲でも、海外からの観光客に対する失礼な言動を目にすることが多く、心が痛みます。特にアジア系の観光客に対して私たちはもっと、「おもてなしの心」で接するべきだと提案したいと思います。

観光客は迷惑な人たち?

2020年には年間4000万人を迎え入れるという目標に向けて、政府はいろいろ努力し研究しているようですが、同時に一部の日本人にみられる、海外からの観光客は迷惑な人たちという偏見を払拭する努力も、今一度必要ではないかと感じます。

たとえば私は東京で、何人かのタクシーの運転手さんに「インバウンドで忙しいでしょう?」と聞いてみました。「とんでもない、彼らはタクシーに乗らずチャーターバスでの移動だから、交通渋滞になり迷惑」とか、「ワンメーターしか乗らないのにカード支払いだから時間がかかり、私は外国人とみれば乗せない」「マナーも悪いしね」などと、たちどころに憎々しげに言う応えが返ってきます。

また別の日ですが、皇居の二重橋をバックに記念写真を撮ろうとしていたアジア系の若い2人が、お堀を囲む芝生の手前の柵のさらに道路側の、ブロックにして2~3段の高さの石の上に乗った時のことです。警察官が「乗らないで!」と大声で言ったものの、日本語は通じません。次の瞬間その警官は「乗るなと言っているのがわからないのかー!」と指差しながら怒鳴り、やっと通じた2人は慌てて降りた、という場面に居合わせました。

函館でも、こんな経験をしました。インバウンド観光客がいなければ、この地域の観光業は壊滅していたのではないかと思うほど、観光地や交通機関はどこも、アジア系観光客でいっぱいという印象でした。

そこの朝市の食堂での出来事です。相席だった一人旅の中国人女子学生に、まず店員はマニュアルどおり、「ワサビは大丈夫ですか?」と聞きました。私に対する聞き方に比べても、随分ぞんざいなのが気になりました。学生は「はい、大好きです」と答えたのに、出てきた海鮮どんぶりに、ワサビがついていなかったのです。学生が片言の日本語で「ワサビをください」と催促しますと、中年の女性店員は謝りもせず、小皿に入れたワサビを放り投げるように置きました。

「忙しい店だから、余裕がないようね。ごめんね」と、思わず私がその観光客に謝りました。彼女はひと言、「大丈夫です」と言ってくれましたが、私ならその無礼に怒って、食べずに帰る場面でした。偶然相席にされた私に対する態度と随分違ったので、明らかにこれは、彼女の国の人に対する思い上がった態度であると断言できます。

日本にとって「お荷物」なのか

私はこれは、ステレオタイプ化した外国人観光客に関する報道の仕方にも責任があると思います。民泊を利用するインバウンドに関する記事には、「ゴミの分別ルールを守らない」「周囲の迷惑構わず騒ぐ」と付記されることが多く、直接インバウンド観光客と接したことのない人にまで、まるで彼らが、日本にとってお荷物でしかないような、結果的に印象操作になっているのを感じます。

「爆買い」報道でも、何かにつけて上から目線だと感じましたが、考えすぎでしょうか。かつては日本人も、パリのブランド街で爆買いした時代がありましたし、「日本を売ってニューヨークを買おう」とあるニュースキャスターが冗談を言ったほど、ニューヨークのあらゆるものを日本人が買い漁った時代もありました。ある国の人が、より先進国で爆買いをするのは、何も今の中国の人に限ったことではありません。

ほんの3名に聞いただけですが、東京のタクシーの運転手さんが、一度もインバウンド観光客を乗せたことがないのに、「マナーが悪いから乗せない」と言ってはばからないのは、ステレオタイプ化した報道による影響の一例ではないでしょうか。

許認可を受けたうえで、小さな民泊を経営している友人がいます。9割が中国人ゲストだそうです。開業してみて一番驚いたことは報道とのギャップで、世界観も中国人感も変わったと言います。皆さん礼儀正しく、これから多くのインバウンドを迎える日本人として、学ぶところが本当に多いと、語っています。

たとえば資源ゴミと空き缶などのゴミはオーナーが後で分別するつもりで同じゴミ箱を指定すると、「自分たちも本国で分別していますよ」と言って、皆さんきちんと生ゴミと3種類に分別されるそうです。その後もゴミ出しを守らない国民性だとは、感じたことがないということです。

お土産をくださるゲストも多く、8種類もの中国料理を作ってオーナーをもてなした家族や(干しエビや干し貝柱など、小さなダシ類を日本のスーパーで探すのが大変だったらしい)、ある女性グループはオーナーを招いて中国の少数民族の踊りをいくつも披露してくれたとか。

この友人は、「インバウンド報道では、“安い民泊を利用、爆買い・ゴミや騒音に関するマナーの悪さ”などが強調されるが、そのような報道に違和感がある」と言います。ホテルにはない、アットホームな親戚宅を訪れる感覚を求めてやって来るゲストも多く、ホストとしての心得を、逆に教えられることが多い毎日なのだそうです。

またこの国の人たちに、60~70代の親世代と同行する家族旅行が多いことにも、この友は感心しています。多くの日本人が忘れかけている、家族の絆を思い起こさせてくれる瞬間が多いのだそうです。

「お・も・て・な・し」は、誇大広告?

筆者が小学生だった頃、住んでいる市に市民憲章ができました。5章しかなかった中の1章が、「私たち市民は、旅行者を温かく迎えましょう」というものでした。当時はほとんどが欧米系ですが、先生からは「通りすがりの外国人観光者に対してでも、目をそらすのは失礼です。ニコッと会釈するだけであいさつになるのですよ」と教えられました。

あれから60年。私たちの中のどれだけの人が、東南アジア系の観光客に、ニコッと微笑むだけのあいさつをしているでしょうか。またはそのタイミングがなくとも、「ようこそ日本へ。良い旅でありますように」という気持ちを抱いているでしょうか。間違った情報で「マナーが悪いインバウンド」と心中に抱くだけで、インバウンド観光客の方たちが受け取る日本の印象も、随分違うはずです。

私は海外旅行では、随分な親切を受けています。フランスの田舎の祭りでは、屋台の中に招き入れられてビールをごちそうになり、周囲の屋台仲間まで集めて一期一会の乾杯をしてくれました。ロンドン郊外では方向を尋ねただけなのに、30分も一緒に歩いて案内してくれた人がいました。アジア系だからと言って不愉快な目にあったことはなく、「遠い国からわが国へようこそ」という心を感じ、その国がさらに好きになったものです。

旅先で受ける親切は、旅を何倍も楽しく豊かな思い出に変えてくれます。そんな経験から、せっかく日本に関心を持ってやってきた旅を、上から目線や偏見で、日本人が台無しにしてどうするのだと怒りを覚えるのです。

幸い2017年上半期のインバウンド観光客は1375万人と過去最高記録を更新。爆買いが収まったとはいえ4~6月期の消費額も、順調に最高記録を更新しているそうです。日本の旅に満足している人が多く、日本ファンが増えていることの証明でもあると思います。

私が目撃したインバウンド観光客に対する心無い人たちは極少数だということになりますが、数が問題ではないはずです。実際、観光客側にマナー違反をする人はいますが、それはどこの国にもいることですし、文化の違いも考慮する必要があります。十把ひとからげに偏見を持つのは問題です。

東京五輪の招致時に世界に向けて発信したお国自慢の「おもてなしの心」を、観光業の人もそうでない人も、日本側のマナーとして、今一度再確認する必要を感じます。海外からのお客さんを迎える側の、民度が問われているのだと思います。



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by hageguma | 2017-08-25 17:24 | 読み物 | Comments(0)